ベラルーシ

ベラルーシ
Беларусь (ベラルーシ語、ロシア語)
Belarus (英語)

Flag_of_Belarus.png

1991年に独立したベラルーシは、ヨーロッパ東部の平原に位置する内陸国で、かつてソ連を構成していた15共和国の1つです。ソ連時代は白ロシア(ベロルシア)と呼ばれていましたが、独立に伴い現地語発音のベラルーシと改称しました。その国土の大半は低地かつ湿地帯に恵まれ、温暖湿潤な気候と豊かな水源を持つ肥沃な土壌を抱えるため、古くから農業に適した地として多くの国々がその領有権をめぐって争ったといいます。古代から既に、現在の東スラヴ系三大民族(ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人)の始祖となったルーシと呼ばれる民族が居住し、独自の諸公国を樹立していましたが、13世紀には西部のリトアニア大公国の支配下に入り、14世紀末にポーランドとリトアニアが合同すると、ベラルーシでは都市部を中心に急速にポーランド化が進行。それに伴い、この地に住むルーシと支配層のポーランド人の文化的融合が始まり、現在のベラルーシ人に受け継がれる民族意識(特にロシア人とは別民族という意識)が少しずつ醸成されていったようです。この合同国家は18世紀に消滅し、ベラルーシは帝政ロシアの版図となったものの、ロシア革命によって引き起こされた一連の混乱の中で民族意識が噴出。1918年にはベラルーシ人民共和国の樹立が宣言され、ベラルーシ人による歴史上初の近代国家が成立しました。この国は内紛を収拾できず、結果的に1年程度の短命国家となり、共産党軍(いわゆる赤軍)の統治下での新政権樹立を経て、1922年にソビエト連邦が結成されるとその構成国となってしまいましたが、一度でも自らの国民国家を持ったという自信はベラルーシ人を大きく鼓舞し、ソ連崩壊までロシアやウクライナとは別の構成国としての歴史を歩むこととなりました。

1991年にソ連が崩壊すると、この国もベラルーシ共和国として改めて独立しましたが、ソ連の継承国となったロシアとの関係をめぐって国論が二分されたほか、経済面でも国有経済から急激に市場化へ移行したため大規模な混乱が見られ、政情は安定しませんでした。そんな中、1994年の大統領選で当選した検事出身のアレクサンドル・ルカシェンコのもとで、ロシアとの統合を目指す勢力が急速に伸長。国内政治では国家の中央集権化、ソ連時代への回帰を軸とした個人独裁体制が確立される一方、外交面では内陸国ベラルーシにとって、エネルギー政策や貿易において切り離せない大国ロシアとの協力を進め、強権的ながらも国家の安定化に成功しました。この功績によって、政権は確固たる政治基盤を樹立することとなり、就任から20年が経った現在でも、ルカシェンコが一貫して大統領の座に留まり続けています。こうした内情のため、特に欧米の自由主義諸国からは「ヨーロッパ最後の独裁者」と非難されるほか、対ロシア関係もプーチン政権によるベラルーシ併合を危惧して一進一退の状況が続くなど、彼を取り巻く外交環境は決して順風満帆ではありませんが、少なくとも独立直後の新国家を混乱から救い、徹底した実務主義に基づく指導で政情の安定化と一定の経済成長を成し遂げた手腕を評価する国民は多く、当面はルカシェンコの強烈な個性のもとで国政が運営されていく見通しです。

ベラルーシの国旗はルカシェンコ政権成立翌年の1995年に制定されたものです。独立後の各共和国がソ連時代の旗とは全く異なる国旗を使用する中、ベラルーシだけは当時とよく似た旗を使っていますが、これも前述のように、ソ連時代のような警察国家じみた政治手法を好むルカシェンコ大統領と、彼の究極的な目標である「ソ連復活」という主張が如実に表された結果と言えます。配色に関する公式な見解は出されていませんが、白は白ロシアと呼ばれていた時代からのベラルーシ人の民族色であり、赤は栄光の過去を、緑は明るい未来と豊かな森林を象徴すると一般的には解釈されます。ホイスト部には民族衣装や帽子といった、ベラルーシ人の伝統的な織物に使われる紋様が描かれています。この紋様の配色はソ連時代と同じ赤と白ですが、ソ連時代は赤地に白の紋様だったのに対し、現在は白地に赤の紋様となっています。国旗の本なんか読んでると、よく「ソ連時代の旗から鎌と槌と星を除いただけ」なんて解説されていますが、実はこのように微妙な変更も施されていたんですね。2012年には更に配色の厳密化や細かい隙間の削除といった微調整が行われ、現在の意匠になりました。

縦横比:1対2

【旧国旗】
Byelorussian_SSR.png
ソ連を構成していた15共和国の1つ、白ロシア・ソビエト社会主義共和国の国旗です。1951年から1991年まで用いられました。ソ連時代の各共和国の国旗はソ連国旗にそれぞれの意匠を盛り込んだものでしたが、白ロシアではホイスト部に民族の伝統的な紋様を書き入れることが許され、ぱっと見ただけでは現国旗と大差ありません。

ちなみにソ連時代に特例として、ソ連の枠とは別枠で、白ロシアとウクライナは国連に加盟していました。よってソ連の他の共和国に比べると、この旗は見る機会が多かったのかもしれません。

Flag_of_Belarus_(1918-1919_and_1991-1995).png
1991年に白ロシア・ソビエト社会主義共和国がベラルーシ共和国としてソ連から独立すると、ポーランド・リトアニア合同国家時代にリトアニア人とベラルーシ人の象徴として使用された「赤地に白抜きで馬に跨った騎士を描いた旧国章」に由来する白、赤、白の国旗が制定されました。また、この旗は1918年に一時的に成立したベラルーシ人民共和国臨時政府も用いていた旗であり、新国旗の制定というよりは復活と言えるでしょう。

白は国名の由来である白ロシアからとられたもので、自由と独立を象徴し、赤はそれらを守るためなら流血をも厭わないという、国民の決意を表します。1994年に成立したルカシェンコ政権の指針により1995年に廃止され、現国旗に移行。白、赤、白の旗は現在では掲揚を禁止されていますが、同大統領の長期政権に反発する反体制派は今でもこの旗を「ベラルーシ人の真の民族旗」と主張し、ルカシェンコ政権が打倒された暁には、国旗として復活するべき存在として、デモなどでこの旗を掲げています。

Flag_of_Belarus_(1995-2012).png
1995年に制定された国旗です。現国旗とほぼ同じですが、配色が現在のものより若干明るいほか、ホイスト部の紋様やその周囲にある白枠が一部変更されています。2012年に現国旗に移行。


ベラルーシ共和国
Рэспублiка Беларусь
Республика Беларусь
Republic of Belarus


Map_of_Belarus.gif

統計データは原則として2015年時点のもの。

[地理]
位置:ヨーロッパ
面積:約20.8万km² (本州の約91%)
人口:926万人
都市人口率:76.7%
首都・最大都市:ミンスク (Minsk)
主要民族:ベラルーシ人84%
       ロシア人8%
       ポーランド人3%
       ウクライナ人2%
       少数のユダヤ人、アルメニア人、タタール人など。
主要言語:ベラルーシ語とロシア語が公用語。ベラルーシ語はベラルー
       シ人本来の民族語だが、ソ連時代の影響と政権のロシア語
       優遇政策により、現在の話者数は人口の1割弱に過ぎない。
       ロシア語は国民の7割以上が母語とするほか、他言語の話者
       もビジネス、教育など様々な場で共通語として使用する。他に
       ポーランド語、ウクライナ語など。
主要宗教:キリスト教55%
        正教会48%
        ローマ・カトリック教会7%
       無宗教41%
       極少数のユダヤ教、イスラム教など。

[政治・軍事]
独立:1990年7月27日(独立宣言)、1991年8月25日(正式独立)
国連加盟:1945年10月24日 (原加盟国、注1)
政治体制:共和制、大統領制
元首:大統領
    直接選挙制。任期5年。再選制限なし。
政府:閣僚評議会(内閣に相当)
    首相と閣僚は大統領が任命。
議会:二院制の国民議会
    ●共和国院(上院。共和国評議会とも)
     64議席。56議席は国内の各種社会団体、労働組合、公共組織
     などの代表で構成され、国家を構成する6州と、単独で州と同格
     の首都ミンスクの計7区画から8名ずつ選出。残る8議席は大統
     領が任命。任期4年。
    ●代議院(下院)
     110議席。直接選挙制(小選挙区制)。任期4年。
政党制:多党制だが、国会議員のほとんどは無所属であり、その
     大半はルカシェンコ現大統領の支持者で占められている。
     反政府野党の活動は厳しく弾圧されるほか、親政権派の
     政党も活動は低調で、政治は政党単位では行われない。
     (ルカシェンコ自身もいかなる政党にも所属していない)
国政選挙権:18歳以上の国民全て
兵役制度:徴兵制
国防費:9億7900万米ドル
軍組織:ベラルーシ共和国軍
     ●国防省管轄
      陸軍2万3000人
      空軍1万5000人
     ●内務省管轄
      国内軍1万1000人 (治安部隊に近い)

[経済・通信・その他]
中央銀行:ベラルーシ共和国国立銀行
通貨:ベラルーシ・ルーブル (ruble, BYN)
国内総生産(GDP):546億900万米ドル
1人当たりGDP:5741米ドル
GDP構成比:農林水産業9.2%
        鉱工業40.9%
        サービス業49.9%
労働人口:不明 (450~500万人前後と推計される)
失業率:不明 (2%未満と推計される)
輸出額:226億5000万米ドル
輸出品:石油製品、化学製品(特に肥料)、酪農品、鉄鋼、機械類、自動車
輸出先:ロシア39%、英国11%、ウクライナ10%、オランダ4%、ドイツ4%
輸入額:254億4000万米ドル
輸入品:原油、天然ガス、機械類、鉄鋼、自動車、医薬品、繊維製品、魚介類
輸入元:ロシア57%、中国8%、リトアニア6%、ドイツ5%、ポーランド5%
固定電話回線数:454万1000回線
携帯電話回線数:1144万8000回線
国別電話番号:375
ccTLD:.by
インターネット利用者数:579万人
車両通行:右側通行
平均寿命:72.9歳 (男性67.2歳、女性78.6歳)

[日本との関係]
国交樹立:1992年1月26日
相手公館:大使館 (東京)
駐日相手国人数:338人 (永住者125人)
日本公館:大使館 (ミンスク)
在留日本人数:67人 (永住者14人)
現行条約:2012年 原発事故後協力協定

(注1)
国連創設当時はソ連を構成する15共和国の1つだったが、ウクライナと共に、ソ連の加盟枠とは別枠での加盟が認められた。当初ソ連は15共和国全ての加盟を求めていたが、アメリカがそれに対抗して全48州(当時)の加盟を示唆したため、ソ連も要求をウクライナと白ロシアのみに引き下げた経緯がある。

一方、前身の国際連盟が、アメリカとソ連という2つの超大国を欠いた状態で第二次大戦に突入した結果、国際社会の協調と一貫行動という理念を果たせなくなった反省から、ある程度はソ連の要求も呑まざるを得ない事情もあった。いわばソ連を国連という枠組みに繋ぎとめておくために、国際社会が容認した例外的措置である。


《国歌「我ら、ベラルーシ人」》
制定:1955年(曲)、2002年(歌詞)
作曲:ネステル・ソコロフスキー
作詞:ミハス・クリムコヴィッチ、ウラジーミル・カリズナ

我ら、ベラルーシ人。平和の民なり。
心を籠めて祖国に捧ごう。
誠実な友と共に成長しよう、そして懸命に働こう。
独立した一族として。

我が聖なる祖国の名に栄光を!
民の兄弟愛の如き絆に栄光を!
我ら、心から祖国を愛さん!
永遠なれ、繁栄を極めよ、ベラルーシよ!

《国名の由来》
ベラルーシ語とロシア語では共にБеларусьと表記されるが、ベラルーシ語ではビェラルースィ、ロシア語ではビラルースィと微妙に発音が異なるので注意。英語ではBelarus(ベラルース)と表記される。ソ連時代の表記であるБелоруссия(ビラルースィヤ、白ロシア)は、ロシア国内では今でも用いられることがある。

国名の意味は「白いルーシ」で、ルーシとは現在のロシア系民族の祖先に当たり、ロシアという言葉の由来でもある。日本でもソ連時代は白ロシア、あるいはビラルースィヤが転訛したベロルシアと表記されていた。ルーシ及びロシアの語源についてはロシアの記事を参照のこと。

白の意味について定説は無いが、ルーシの中でもとりわけ肌の白い人々をベラルーシ人(白いルーシ)としてその他のルーシと区別したとする説や、ルーシにはかつて方角を色で表す文化があり、白は「西」を意味することから「西のルーシ」を表したとする説などが唱えられている。

旧国名
1918-
1919
 ベラルーシ人民共和国
(ベ)Беларуская Народная Рэспублiка
(英)Belarusian People's Republic
1920-
1991
 白ロシア・ソビエト社会主義共和国
(ベ)Беларуская Савецкая
   Сацыялiстычная Рэспублiка
(露)Белорусская Советская
   Социалистическая Республика
(英)Byelorussian Soviet Socialist Republic

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嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

国旗に関しては、まずは基礎知識カテゴリを熟読して下さい。

ツイッターやってます。基本的に更新情報はここでつぶやいてます。

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