ブラジル

ブラジル
Brasil (ブラズィウ) (ポルトガル語)
Brazil (ブラズィル) (英語)

Flag_of_Brazil_.png

ブラジルはラテンアメリカ諸国で最大の面積と人口(共に世界5位)を持つ巨大な連邦国家で、南北アメリカ大陸の中では唯一のポルトガル語圏として知られます。この広大な土地には、16世紀初めよりポルトガル人が積極的に入植を進め、後に国名の由来ともなった染料(パウ・ブラジル)の供給地として統治されていましたが、それが枯渇すると、今度は当時高価だった砂糖の一大生産拠点として注目されるようになり、先住民やアフリカから連れてきた黒人を労働奴隷として酷使しながら、次第に支配領域を拡大していきました。ところが1807年、ナポレオン時代のフランスによりポルトガル本国が侵略され、首都リスボンが落とされる事態が発生。そのため王室(ブラガンサ家)は遠く離れたブラジルに移り、リオデジャネイロへの遷都を宣言します。これを契機にブラジル各地の開発が進み、1815年には本国と同格の地位を持つ地域に格上げされ、ナポレオン戦争後に本国が独立を回復した後も、その政治的発言力は向上の一途をたどりました。そして1821年に王族のほとんどがリスボンに帰還した後も、国王ジョアン6世の息子ペドロは摂政の名目でブラジルに留まり、翌1822年には現地の有力者たちの支持を受けて独立戦争を展開するようになります。ナポレオン戦争で疲弊した本国にこれを抑える国力は無く、同年中にブラジル帝国の独立が宣言され、初代皇帝ペドロ1世を君主に戴く新たな独立国家が誕生することとなりました。

当時既に欧米諸国の趨勢は奴隷制廃止に向かっていましたが、奴隷制を基軸とした農業国体制が維持されたまま独立したブラジルでは、帝国の支配層である少数の地主・教会関係者(皇帝の支持基盤)と、大多数を占める庶民や知識人層の間で激しい対立が発生し、政情は混乱。1831年に即位したペドロ2世は国政の安定に尽力しながら漸進的な改革を進めたものの、改革で不利益を被った地主層の離反は避けられず、また庶民の奴隷制廃止を求める声は、いつしか専制的な帝政の廃止を求める運動へと拡大し、1889年には遂に革命が発生。支持基盤を失った皇室はわずか2代でその地位を失うこととなり、ブラジルは共和制に移行すると同時に、アメリカ型の連邦国家へと改組されることとなったのです。しかし、その後のブラジルでは革命で中心的な役割を果たした軍部が強い影響力を持ち続け、民選大統領に対するクーデターや権威主義的な指導者の擁立を繰り返したほか、1964年からは実際に軍事政権を樹立して権力を掌握するなど、政情の不安定さは解消されませんでした。1985年になるとようやくブラジルにも民主政治が定着するようになり、以後は紆余曲折がありながらも、おおむね安定した政情を享受しています。一方、経済面では20世紀後半に大規模な工業化を遂げたほか、莫大な天然資源と豊富な農産物を軸に急速な経済成長を見せ、現在では新興国として各国から注目される存在となりました。かつては途方もない貧富の格差、工業化進展のために背負った重い対外債務が経済の足かせとなっていましたが、好調な経済はこれらの問題を徐々に解消しつつあり、南米の地域大国としてその存在感を発揮しています。

ブラジルの現国旗のデザインは、1889年の共和革命の4日後に制定されました。公的には配色にこれといった意味は与えられていませんが、一般的には緑は広大なアマゾンからくる森林資源、黄は豊富に存在する鉱産資源と解釈されます。中央の意匠は1889年11月15日の共和革命の日の夜空を表し、27個の星はブラジルを構成する26州と首都ブラジリア(連邦区)を象徴します。空にかかる白帯には国の標語である「秩序と進歩」がポルトガル語で書かれていますが、これはフランスの哲学者オーギュスト・コントの著作『実証政治学体系』にあった言葉を引用したものです。この本は当時、共和主義者の教典とまで言われ、共和制移行後のブラジル首脳部がいかにこの本の影響を受けていたかがうかがい知れます。

縦横比:7対10

【旧国旗】
Flag_of_the_Empire_of_Brazil.png
1822年にポルトガルから独立したブラジル帝国の国旗です。緑は初代皇帝ペドロ1世が属するブラガンサ家、黄は皇后マリア・レオポルディナの出身家であるハプスブルク家を象徴し、中央に十字と地球儀、そして州の数を表す星が配され、その上部には王冠が置かれています。これらの意匠の両サイドから下部にかけて、ブラジル特産のコーヒーとタバコの葉が囲んでいます。1889年の共和革命を受け廃止。

Proposed_Flag_of_Brazil_1889.png
1889年、帝政廃止を受けて制定された初代共和国旗です。この国旗は新政府成立時の閣僚(ルイ・バルボーザ財務相)から提案され、同年11月15日に一旦制定されたものの、デザインがあまりにアメリカの星条旗に似ていたためにデオドロ・ダ・フォンセカ初代大統領が承認せず、4日後の19日には帝政時代のデザインを部分的に取り入れた現在のデザインに移行しました。

ちなみに共和制移行後のブラジルの公式国名はブラジル合衆共和国。国名からして、いかに当時のブラジル政府中枢部がアメリカを意識していたことがわかります。この国名は1937年にブラジル合衆国、更に1967年にはブラジル連邦共和国となり、現在に至ります。


ブラジル連邦共和国
República Federativa do Brasil
(ヘプブリカ・フェデラチヴァ・ド・ブラズィウ)
Federative Republic of Brazil
(フェデレイティヴ・リパブリック・オブ・ブラズィル)


Map_of_Brazil.gif

統計データは原則として2015年時点のもの。

[地理]
位置:南アメリカ
面積:約851.5万km² (日本の約22.5倍)
人口:約2億366万人
都市人口率:85.7%
首都:ブラジリアD.F. (葡:Brasília D.F. 英:Brasilia D.F. 注1)
最大都市:サンパウロ (葡:São Paulo 英:Sao Paulo)
主要民族:ブランコ系(白人)48%
       パルド系(諸民族の混血、褐色人とも)44%
       プレート系(黒人)7%
       アジア系(日系人が最大。他にアラブ系や中国系など)1%
       少数の先住民(インディオ)系諸部族、ユダヤ系など。
主要言語:ポルトガル語が公用語で、国民のほとんどが母語として
       使用する。他に先住民族系の少数言語も180ほど存在し、
       一部の住民が話すが、彼らもコミュニティ外では便宜的に
       ポルトガル語を用いる。移民家系ではそれぞれの母国語
       が家庭内言語として維持されているケースも多い。
主要宗教:キリスト教87%
        ローマ・カトリック教会65%
        プロテスタント諸派(ペンテコステ派が主)22%
       無宗教8%
       仏教、ユダヤ教、イスラム教なども小規模ではあるが信仰さ
       れるほか、アフリカ系の精霊信仰にキリスト教や先住民の儀
       式と習俗が融合した独自の民間信仰も、一部に根強い支持
       層が存在する(カンブンドレなどと呼称される)。

[政治・軍事]
独立:1822年9月7日(独立宣言)、1825年8月29日(独立承認)
国連加盟:1945年10月24日(原加盟国)
政治体制:共和制、大統領制、連邦国家
元首:大統領
    直接選挙制、任期4年、3選禁止。
政府:内閣(首相職なし)
    閣僚は大統領が任命。
議会:二院制の国民議会
    ●連邦元老院(上院)
     81議席。連邦を構成する26州と、単独で州と同格の地位を持つ
     連邦区(ブラジリア)から3名ずつ直接選挙で選出。任期8年。4年
     ごとに1/3、または2/3ずつ改選。
    ●代議院(下院)
     513議席。直接選挙制(比例代表制)。任期4年。各州・連邦区の
     選出枠は当該地域の人口に応じて変動する。
政党制:多党制
国政選挙権:18歳以上の国民全てと、16歳以上で識字能力を持つ者
        に選挙権が与えられる。18~70歳までは義務投票制。
兵役制度:徴兵制
国防費:319億5400万米ドル
軍組織:ブラジル軍
     陸軍19万人
     海軍5万9000人
     空軍7万人

[経済・通信・その他]
中央銀行:ブラジル中央銀行
通貨:レアル (real, BRL)
国内総生産(GDP):1兆7747億2500万米ドル
1人当たりGDP:8539米ドル
GDP構成比:農林水産業6.6%
        鉱工業21.1%
        サービス業72.3%
労働人口:1億1040万人
失業率:12.6%
輸出額:1960億米ドル
輸出品:大豆、鉄鉱石、原油、砂糖、鉄鋼、コーヒー、トウモロコシ、肉類、木材パルプ
輸出先:中国18%、米国13%、アルゼンチン7%、オランダ4%、日本3%
輸入額:1714億米ドル
輸入品:機械類、化学薬品、精製石油、天然ガス、自動車、衣類、小麦、銅
輸入元:中国18%、米国15%、ドイツ6%、アルゼンチン6%、韓国3%
固定電話回線数:4367万7000回線
携帯電話回線数:2億5781万4000回線
国別電話番号:55
ccTLD:.br
インターネット利用者数:1億3911万人
車両通行:右側通行
平均寿命:73.9歳 (男性70.2歳、女性77.5歳)

[日本との関係]
国交樹立:1895年11月5日
相手公館:大使館 (東京)
       総領事館 (東京、名古屋、浜松)
       ※東京にある2つの公館のうち、大使館は港区に、総領事館
        は品川区に置かれており、個別の公館として機能している。
駐日相手国人数:17万5351人(永住者10万9361人、特別永住者27人)
相手輸出額:54億4000万米ドル
相手輸出品:鉄鉱石、肉類、トウモロコシ、コーヒー、精錬アルミ、大豆、鉄鋼
日本公館:大使館 (ブラジリア)
       総領事館 (サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ、マナウス、クリチバ)
       ※他にレシフェ、ベレン、ポルト・アレグレに領事事務所が存在
        するが、独立した公館の地位は持たず、レシフェとベレンの
        事務所は駐ブラジリア大使館の、ポルト・アレグレ事務所は
        駐クリチバ総領事館の管轄下で領事事務のみを行う。
在留日本人数:5万4014人 (永住者5万573人)
日本輸出額:47億6000万米ドル
日本輸出品:機械類、自動車と部品、鉄鋼、有機化合物、精密機器
現行条約:1940年 司法共助取極
       1962年 航空運送協定
       1963年 移住・植民協定
       1964年 文化協定
       1967年 租税条約
       1971年 技術協力基本協定
       1984年 科学技術協力協定
       2012年 社会保障協定

(注1)
D.F.はDistrito Federal(連邦区)の略。連邦政府の直轄領であり、州と同格の地位を持つ。


《国歌「ブラジル国歌」》
制定:1922年 (1831年完成、1909年歌詞変更、1922年法制化)
作曲:フランシスコ・マヌエル・ダ・シルヴァ
作詞:オゾリオ・デュケ=エストラーダ

イピランガ(注2)の静かな岸辺は聞いた。
英雄たる人々の轟く雄たけびを。
自由の太陽の輝きは、祖国の空を照らし出す。
力強き腕で勝ち取りし、平等の誓い。
おお、自由よ、汝の胸の中で、
我らの心は死すら厭いはせぬ!

おお、愛しき麗しの祖国よ、万歳!万歳!

ブラジル、それは荘厳なる夢と、
愛と希望の光が振り注ぐ大地。
清く微笑む汝の美しき空に、
南十字星はまばゆく輝く。
生まれながらにして強く、美しく、
恐れを知らぬ巨人よ。
汝の偉大さが、汝の子孫の未来を照らす。

愛しき地、
数多の国の中で最愛の地、それが汝、ブラジル。
おお、愛しき祖国よ!

汝は我らの優しき母、
愛しき祖国、ブラジル!

《国名の由来》
ポルトガル語ではBrasil(ブラズィウ)、英語ではBrazil(ブラズィル)と表記される(sとzの違いに注意)。首都ブラジリアはこれに地名を表す接尾語-iaを付加した名称だが、国名とは異なり、英語でもsがzに変化しない。

かつて赤い染料として用いられたマメ科の木は、ポルトガル語で「赤い木」を意味するpau-brasil(パウ・ブラズィウ)と呼ばれた。その木が生い茂る場所をポルトガルの探検家ペドロ・アルバレス・カブラルが南米大陸の一部に発見し、そのまま地名として採用したのが由来。なお、brasilの語源を更に辿ると、同語で「赤く熱された炭火」を意味するbrasa(ブラザ)になり、赤のニュアンスがbrasilに受け継がれているのがわかる。

旧国名
1822-
1889
 ブラジル帝国
(ポ)Império do Brasil (インペーリョ・ド・ブラズィウ)
(英)Empire of Brazil (エンパイア・オブ・ブラズィル)
1889-
1937
 ブラジル合衆共和国
(ポ)República dos Estados Unidos do Brasil
  (ヘプブリカ・ドス・エスタードス・ウニードス・ド・ブラズィウ)
(英)Republic of the United States of Brazil
  (リパブリック・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・ブラズィル)
1937-
1967
 ブラジル合衆国
(ポ)Estados Unidos do Brasil
  (エスタードス・ウニードス・ド・ブラズィウ)
(英)United States of Brazil
  (ユナイテッド・ステイツ・オブ・ブラズィル)


(注2)
サンパウロ州を流れるイピランガ川のこと。1822年、州都サンパウロにあるイピランガの丘で摂政ペドロ(後の皇帝ペドロ1世)が「独立か、死か!」と叫び、やがて独立戦争へと繋がっていったという。現在、当地は「ブラジル建国の地」として独立記念公園となっており、ペドロ夫妻や側近の兵士たちの銅像が建てられている。

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プロフィール

嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

国旗に関しては、まずは基礎知識カテゴリを熟読して下さい。

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