インド

インド
भारत (バーラト) (ヒンディー語)
India (インディア) (英語)

Flag_of_India.png

南アジアの地域大国であり、中国に次ぐ世界第2位の人口を持つインドは、紀元前から農耕と畜産を中心とした高度な文明が栄え、様々な王朝が興亡を繰り広げてきた地として有名です。その名声は西はローマ帝国、東は日本にまで伝わり、この地が生み出した仏教は、後にアジア東部の主要宗教の1つとなって現在まで信仰されています。一方、インド本土の仏教は13世紀頃に衰退し、代わってヒンドゥー教(仏教隆盛以前に信仰されていたバラモン教が母体)の復活や、西から侵入した諸民族によってもたらされたイスラム教の勃興が見られました。特にイスラム教は、13-16世紀にかけてデリーを中心として北インド一体を支配したデリー・スルタン朝と呼ばれる5大王朝のもとで地位を高め、その後は中央アジアのティムール朝の残党が、北インドに移って新たにムガル帝国を建国したことで飛躍的に数を増やしました。帝国は住民の大半を占めるヒンドゥー教徒とは融和と対立を繰り返しつつも、時を経て徐々にインド亜大陸を代表する巨大国家に成長。また同時に、古くからの香辛料や茶、染料に加えて、豊富な原材料に恵まれた繊維産業も発展し、大航海時代には数多くの西洋船が「(ヨーロッパ人にとっての)珍品」を求めてインドを訪れたといいます。

しかし18世紀の産業革命以降、交易に特化した大航海時代風の国際経済体制が終結し、帝国主義に目覚めた西洋各国が世界各地に領土的野心を持って進出するようになると、ムガル帝国を取り巻く環境も一変します。もとより17世紀以降、徐々に勢力が衰えてきていた帝国は絶えず内乱に揺れていましたが、18世紀からイギリスが東部のベンガル地方を拠点に次々と支配域を拡大していき、やがて帝国はデリー周辺のみを統治する名目的な存在となるほど縮小してしまいます。その中でも1857年に発生したインド大反乱(シパーヒーの乱、セポイの乱)といったインド人側の抵抗運動は起こりましたが、軍事力で圧倒的に勝るイギリスはこれを鎮圧し、翌年遂にムガル帝国を廃止。1877年には改めてイギリス国王が皇帝を兼ねるイギリス領インド帝国が成立し、大英帝国の一部として、更にはその最大の植民地として、苛烈な搾取体制を敷きながら第二次大戦後まで同地を支配します。インド人側の独立運動は1920年代よりガンディーを指導者として活発化し、彼の非暴力・不服従を是とする運動は次第にインド全土に拡大。これは植民地当局を想像以上に圧迫し、懐柔策も出されたものの、肥大化した民衆の力はこれに屈することなく続けられます。結局、第二次大戦が終結すると、もはや植民地を維持する国力を喪失したイギリスは遂にインドの独立を認めることとなりました。しかし、これまで反英・独立を目標に共闘してきた国内のヒンドゥー教徒とイスラム教徒も、その達成が明確化すると再び対立し始め、イスラム教徒が多い地域は1947年8月15日のインド独立と同時に、新たなイスラム国家パキスタンとして分離。以後両国はカシミール地方の領有権など多くの問題を理由に戦火を交えており、南アジアの2大国の対立は国際関係に大きな影響を与えています。

独立1ヶ月前の制憲会議の場で採用されたインドの国旗は、ヒンディー語で「三色旗」を意味するतिरंगा(ティランガ)と呼ばれます。そのデザインは多くの宗教・宗派が混在するインド社会の融和を願った意匠で、サフラン色はヒンドゥー教徒、緑はイスラム教徒というインドの二大宗教を表し、白は両宗教の和解を表します。サフラン色はヒンドゥー教で全てを焼き尽くす炎の色とされますが、これは「この世の万物は永遠ではないのだから、永遠ならざる物質的な欲望ではなく、永遠の存在たる神に帰依すべし」という理念から、修行者の衣服の色として広く用いられ、やがてヒンドゥー教そのもののシンボルカラーになったとのこと。一方、緑はイスラム教の預言者ムハンマドが身に着けていたターバンの色とされ、イスラム世界で聖なる色として貴ばれるほか、白は何物にも染まっていない純潔性の象徴として、インドが複数の文化を内包しつつ1つの国家としてまとまる上で、宗教に中立であることを表明する色でもあります。他方で、サフラン色は勇気と犠牲、白は純潔と真理、緑は平和と公正の色とする場合もあります。中央の紋章はチャクラ(法輪)と呼ばれるもので、古代インドで栄えた仏教国マウリヤ朝において、最盛期の王アショーカが建立したとされる仏典塔の柱を由来とします。1つの旗でヒンドゥー教、イスラム教、仏教という3つの宗教とその融和を願い、インドが1つの国家として発展していく希望が込められた旗と言えましょう。また同時に、チャクラはガンディーがイギリスに対する独立運動の中で、インド産の繊維製品の復興により経済的に自立することこそ、独立を実現するための最重要課題であると位置付けていたことにも関連しています。これは、イギリスにより機械製の安価な繊維製品が導入され、インドの伝統的な繊維産業が衰退したことが、インド全体の国力の低下、ひいては植民地化を招いたという歴史的な背景を鑑み、ガンディー自ら古い糸車で糸を紡いでいた経緯に基づき、糸車の形を国旗に取り入れたという経緯もあります。なお、チャクラの色である青は空と海の象徴であり、24本の線は一日が24時間であることを示しています。

縦横比:2対3


インド共和国 (注1)
भारत गणराज्य (バーラト・ガナラージヤ)
Republic of India (リパブリック・オブ・インディア)

Map_of_India_.gif

統計データは原則として2015年時点のもの。

[地理]
位置:アジア
面積:約328.7万km² (日本の約8.7倍)
人口:約12億8239万人
都市人口率:32.7%
首都:デリー (ヒ:दिल्ली 英:Delhi, 注2)
最大都市:ムンバイ (ヒ:मुम्बई 英:Mumbai)
主要民族:インド・アーリア系諸民族74%
       ドラヴィダ系諸民族24%
       他に少数のモンゴル系、ペルシア(イラン)系、トルコ系など。
       ※アーリアとドラヴィダという区分は人種的差異に基づいた
        便宜的な分け方であり、実際にはより多くの民族に分か
        れる。インドの民族総数は少なくとも600以上とされる。
主要言語:連邦レベルではヒンディー語が公用語、英語が準公用語。
       ヒンディー語は北部を中心に国民の4割が話す最大言語で
       あるが、南部ではドラヴィダ系諸語が強く、国家全体を統合
       する言語は存在しない。英語は高等教育における教授言語
       であるほか、メディアやビジネスなど多くの分野で使用機会
       がある言語のため、近年は習得者が急増し、国民の2割~
       3割ほどが理解可能。なお、各州は独自かつ多様な州公用
       語を持っており、インド憲法も地方言語として22言語を列挙し、
       「公認言語」の地位を与えている。また、公認言語以外にも
       様々な地方言語が話され、言語総数は800にも及ぶ(注3)。
主要宗教:ヒンドゥー教78%
       イスラム教15%
        スンナ派10~11%
        シーア派4%
        少数のスーフィズム(神秘主義者)、アフマディー教団など。
       キリスト教2~3%
        半数はカトリック教会の信徒。他に聖公会系の南北インド
        教会、東方諸教会、バプテスト教会、セブンズデー・アドベ
        ンティスト教会、新使徒教会などが混在。
       シク教2%
       仏教1%
       他に少数のジャイナ教、ゾロアスター教、バハーイー教など。

[政治・軍事]
独立:1947年8月15日
国連加盟:1945年10月30日(原加盟国)
政治体制:共和制、議院内閣制、連邦国家
元首:大統領
    上下両院と各州議会の議員で構成される「選挙人団」が選出。
    任期5年、再選制限なし。
政府:連邦閣僚評議会(内閣に相当)
    大統領が下院最大会派の指導者を首相に任命。
    他の閣僚は首相の指名に基づき、大統領が任命。
議会:二院制の国会
    ●全州評議会(ラージヤ・サバー、上院)
     245議席。233議席は国家を構成する29州と6つの連邦直轄領、
     そして単独で州と同格の地位を持つ首都デリーを合わせた計36
     の地方議会が、域内人口に応じた人数を選出。残る12議席は大
     統領が国家への功労があった有識者の中から任命。任期6年で、
     2年ごとに1/3ずつ改選される。
    ●人民評議会(ローク・サバー、下院)
     545議席。直接選挙制(小選挙区制)。ただしインド人と英国人の
     混血である「アングロ・インディアン」と呼ばれる人々を代表する
     ための議席が2議席だけ用意されており、その枠のみ大統領によ
     る任命制。任期5年。
政党制:連邦規模ではインド国民会議派とインド人民党による緩やかな
     二大政党制が築かれているが、各州・地方レベルでは多党制。
国政選挙権:18歳以上の国民全て
兵役制度:志願制
国防費:513億2000万米ドル
軍組織:インド軍 (核兵器保有国)
     陸軍132万5000人
     海軍5万9000人(海兵隊2000人を含む)
     空軍12万7000人
     沿岸警備隊1万1000人

[経済・通信・その他]
中央銀行:インド準備銀行
通貨:インド・ルピー (rupee, INR)
国内総生産(GDP):2兆735億4300万米ドル
1人当たりGDP:1582米ドル
GDP構成比:農林水産業16.1%
        鉱工業29.5%
        サービス業54.4%
労働人口:5億210万人
失業率:7.1%
輸出額:2724億米ドル
輸出品:精製石油、精錬ダイヤ、宝飾品、衣類、医薬品、機械類、米、自動車
輸出先:米国16%、UAE11%、香港5%、中国4%、英国3%
輸入額:4092億米ドル
輸入品:原油、金、ダイヤ原石、機械類、石炭、天然ガス、有機化合物、鉄鋼
輸入元:中国16%、UAE6%、サウジアラビア5%、スイス5%、米国5%
固定電話回線数:2551万8000回線
携帯電話回線数:10億1100万5000回線
国別電話番号:91
ccTLD:.in
インターネット利用者数:約4億6214万人
車両通行:左側通行
平均寿命:68.6歳 (男性67.3歳、女性69.8歳)

[日本との関係]
国交樹立:1952年4月28日
相手公館:大使館 (東京)
       総領事館 (大阪)
駐日相手国人数:2万8047人 (永住者4916人、特別永住者5人)
相手輸出額:57億1600万米ドル
相手輸出品:精製石油、有機化合物、船舶、魚介類、衣類、精錬ダイヤ
日本公館:大使館 (デリー)
       総領事館 (ムンバイ、コルカタ、チェンナイ)
       他にバンガロール(ベンガルール)に領事事務所が置かれてい
       るが、駐チェンナイ総領事館の管轄下にあり、独立した公館と
       しての地位は持たない。
在留日本人数:8655人 (永住者257人)
日本輸出額:95億2700万米ドル
日本輸出品:機械類、鉄鋼、自動車部品、精密機器、ゴム製品、有機化合物
現行条約:1952年 平和条約
       1956年 航空協定
       1957年 文化協定
       1958年 通商協定
       1960年 租税条約
       1985年 科学技術協力協定
       2011年 包括的経済連携協定(EPA)
       2012年 社会保障協定 (発効は2016年)
       2015年 情報保護協定
       2016年 防衛装備品及び技術移転協定

(注1)
日本外務省は公式国名を単にインド(India)と見なしている。

(注2)
首都をニューデリーする場合があるが、ニューデリーはデリーの1地区であり、単独の都市ではないため、「首都」という意味合いからすればデリーが該当。

(注3)
インド憲法が連邦政府並びに地方政府(州政府と連邦直轄領当局)において公用を認めているのは、以下の24言語。( )内にインドの総人口に占める使用人口の割合を示すが、必ずしも母語としているわけではなく、生活上の必要性から便宜的に習得した者も含む。
▼連邦政府の公用語
  ヒンディー語(41%)
  英語(20%)
▼地方政府の公用語
  ベンガル語(8%)
  テルグ語(7%)
  マラーティー語(7%)
  タミル語(6%)
  ウルドゥー語(5%)
  グジャラート語(4%)
  カンナダ語(3~4%)
  マラヤーラム語(3%)
  オリヤー語(3%)
  パンジャーブ語(3%)
  アッサム語(1~2%)
  マイティリー語(1%)
  サンタル語(以下は全て1%未満)
  カシミール語
  ネパール語
  コンカニ語
  シンド語
  ドグラ語
  マニプリ語
  ボド語
  サンスクリット語


《国歌「ジャナ・マナ・ガナ (インドの朝)」》
制定:1950年
作曲・作詞:ラビンドラナート・タゴール

そなたは全ての民の心を支配せし者。
インドの運命を決定付ける者。
そなたの名は、全ての民の心を揺り動かす。
パンジャーブ人、シンド人、グジャラート人、マラータ人、
ドラヴィダ人、オリッサ人、ベンガル人の心を。
そしてその名は、ヴィンディヤとヒマラヤの山々に響き、
ジャムナとガンジスの流れに呼応し、
インド洋の波に混じり、溶け合う。

民はそなたの加護を祈り、その身を称えて歌う。
インドの運命を決定付けし者よ、
全ての民をその手で救いたまえ。
そなたに勝利を、そなたに勝利を、そなたに勝利を、
勝利、勝利、勝利、そなたに勝利を。

《国名の由来》
ヒンディー語ではभारत(Bharat。バーラト)と呼ばれる。古代インドに存在したという伝説の帝王भरत(バーラタ)の名にちなみ、「バーラタの国」を表す。バーラタとはサンスクリット語で「(神に)愛される」という意味。

英語名India(インディア)はインダス川に由来する名称で、インダスはサンスクリット語で「大きな川」や「水」を表すसिन्ध(sindhu。シンドゥ)を語源とする。また、हिन्दुस्तान(Hindustan。ヒンドゥスタン)という別名を持つが、これはヒンドゥーにペルシア語で「○○の土地」を意味するstan(スタン)を合わせた言葉であり、特にアーリア系住民(ヒンドゥー教においては高い階級に置かれる)の多い北部では好んで用いられる。

漢字では印度と書かれ、と略される。かつては仏教界を中心に天竺(てんじく)とも呼ばれた。

旧国名
1947-
1950
 インド自治国 (インド連合)
(ヒ)ভারত অধিরাজ্য (バーラト・アディラージヤ)
(英)Dominion of India/Union of India
  (ドミニオン・オブ・インディア/ユニオン・オブ・インディア)



【おまけ:ジャンム・カシミール
جموں و کشمیر (ジャンムー・オー・カシミール) (ウルドゥー語)
जम्मू और कश्मीर (ジャンムー・アール・カシミール) (ヒンディー語)
Jammu and Kashmir (ジャンムー・エンドゥ・カシミール) (英語)
Flag_of_Jammu_and_Kashmir.png  Location_of_Jammu_and_Kashmir_in_India.gif

連邦国家インドを構成する29州のうち、最も北に位置するのがジャンム・カシミール州です。州域の大半がヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に覆われた高地で、世界屈指の高峰が連なる厳しい環境を持ちますが、一方で高級繊維素材カシミヤの原産地でもあり、古くから多くの勢力が支配権の確立を狙ってしのぎを削ってきました。現在、カシミール地方は南部をインド、北西部をパキスタン、そして北東部を中国が分割統治していますが、特に前者2国はカシミール地方全域の領有権を主張して双方を非難し合う関係にあり、南アジア最大の不安定材料となっています。

この州の住民の大半はイスラム教徒であり、1947年に印パが分離独立する際も、州民はイスラム国家パキスタンへの帰属を望みました。しかしイギリスの間接統治下で勢力を温存していた藩主はヒンドゥー教徒であり、自身の信仰心と州民の要求の間で板挟みになったため、折衷案としてカシミール単独での独立を目指しました。ですがその直後、カシミールの併合を目論むパキスタン軍が侵攻してきたため、脆弱な勢力しか持たない藩主は同軍への対抗上、地域大国インドへの編入を決断。これにより印パ両国が直接戦火を交えることになり、互いに前述の地域への実効支配を固めた1948年に停戦しました。その後も1960年代、1990年代に両国はカシミール地方で交戦し、現在に至るまで最終的な紛争解決には至っていません。

インドは他の連邦国家と異なり、連邦を構成する各州が独自の州旗を制定することを認めていません。それはこの多民族国家に住む人々を共通の国旗のもとで「インド国民」として1つに統合するためで、州旗の存在はかえって国旗、引いてはインド共和国という国家そのものへの忠誠心を薄めてしまうと政府が危惧しているためです。しかし前述のような特殊な事情でインドに帰属したジャンム・カシミール州だけは唯一、インド憲法で特別な地位を持つ州として規定されており、例外的に独自の州旗を持つことが許されています。この州旗は1952年に制定されたもので、同地のインド編入を推進したジャンム・カシミール国民評議会(JKNC)の党旗をモチーフとしており、赤は労働者を、白は清らかさを象徴します。ホイスト側にある3本の線は州を構成する3つの地区、フライ側の意匠はプラウと呼ばれる農具を図案化したものです。

面積:約22.2万km²; (インド全土の約6.76%)
人口:1255万人
州都・最大都市:シュリーナガル (ウ:سرینگر‎ ヒ:श्रीनगर 英:Srinagar)
          ※冬季のみ南部のジャンムに州都機能が移る。冬季は
            シュリーナガルでは著しく気温が下がり、円滑な行政
            を実施するためのインフラが機能不全に陥るため。
主要民族:インド・アーリア系のドグラ人が約7割。
       他にパンジャーブ人、パハリ人、グッジャール人など。
主要言語:ウルドゥー語(州公用語)、ヒンディー語(連邦公用語)。
       他にドグラ語、カシミール語、ラダック語など各民族語。
主要宗教:イスラム教(大半はスンナ派)67%
       ヒンドゥー教30%
       シク教2%

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プロフィール

嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

国旗に関しては、まずは基礎知識カテゴリを熟読して下さい。

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