リヒテンシュタイン

リヒテンシュタイン
Liachtaschta (アレマン語)
Liechtenstein (ドイツ語・英語)

Flag_of_Liechtenstein.png

リヒテンシュタイン公国は中央ヨーロッパに位置する小さな内陸国です。国土はアルプス山脈の延長線上に位置し、概して山がちなものの、温暖な気候とライン川上流に位置する地理的な好条件から、古くから農業や畜産業の拠点として知られてきました。この地は14世紀以来、神聖ローマ帝国を構成する領邦の1つとして統治されてきましたが、神聖ローマ帝国の貴族としてドイツ・バイエルン地方に本拠地を置き、地域一帯にその名を馳せていた名門リヒテンシュタイン家の当主ヨハン・アダム・アンドレアスが、1699年に低地部に当たるシェレンベルク地方を購入。次いで1712年には高地部のファドゥーツ地方も購入し、1719年に神聖ローマ皇帝カール6世により両地域を合わせた「リヒテンシュタイン公領」の成立が認められました。これが現在のリヒテンシュタイン公国のもととなり、1806年の神聖ローマ帝国解体後は独立国としての地位を認められ、以後プロイセンとオーストリアの間で繰り広げられた「ドイツ統一」運動とは一線を画しながら、現在まで当時の地位を維持し続けてきたのです。他のドイツ系領邦が両国のうちどちらかに帰属して、近代国民国家の中に呑み込まれていったことを考えると、いわば「中世時代の最後の生き残り」とも言えるでしょう。また、リヒテンシュタイン家は公国の外にも多くの私有地を抱える大富豪であり、民選の政府から一切の歳費や支援を受けていないことから、政府の決定に縛られず自由に領域を統治する君主大権を今でも握っており、複数政党制に基づく民主的な議会制度や統治機構を持ちつつも、時に「ヨーロッパ最後の絶対君主国」と呼ばれることもあるようです。

近代以降のリヒテンシュタインは1867年に軍隊を廃止して非武装中立を宣言し、一時は独自路線を歩んだものの、戦乱の続く周辺諸国の情勢に危機感を抱き、西隣のスイスと非常に深い紐帯を保つことで国土の平穏を守る路線にシフトしていきました。その手始めに、ヨーロッパ中を戦渦に巻き込んだ第一次大戦終結翌年の1919年、永世中立国として高い自衛力を保持していたスイスと協定を結び、国防権を委任。次いで1921年には通貨発行権を放棄してスイス・フランを自国通貨としたほか、一部を除いた外交すら基本的にスイス政府に委ねるようになり、同国の保護国となりました。第二次大戦中も外交的にはスイス軍の庇護下で非武装中立を貫徹し、内政ではドイツのナチズムの影響を受けた人々が政府を牛耳ることのないよう、前述の君主大権によって議会を解散させるなど、独立国家としての地位を守るためなら手段を択ばない政策が採られ、現在まで他国に呑まれることのないまま国土を維持してきたのです。さすがにここまでスイス一辺倒の体制では主権国家と呼べるか怪しいため、1990年の国連加盟を機に独自の外交を展開しつつあります(日本との国交は1996年に樹立)が、それでも今なおスイスとは切っても切れない親密な関係で結ばれており、スイスで盛んな精密機械工業の一部がリヒテンシュタイン国内で営まれ、小さな国の民には余りある潤沢な富をもたらしています。

国旗の青と赤は19世紀よりリヒテンシュタインの国民色として用いられていますが、もともとの由来はリヒテンシュタイン家の使用人の制服の色だったとされています。現在では青は空の色、赤はリヒテンシュタインの伝統的な暖炉の火の色とされ、王冠は国民と君主の一体性の象徴と解釈されています。1936年の第11回夏季オリンピック(ベルリン五輪)大会に際して、青と赤の二色旗がカリブ海の島国ハイチの国旗と同じ意匠だったことから混乱が生じたため、翌1937年にリヒテンシュタインは国旗に王冠を配しました。これにより現在のリヒテンシュタイン国旗が成立したのです。ちなみに、縦向きに掲揚する際は王冠が横倒しにならないように作られた縦用の旗が使われます。

縦横比:3対5


リヒテンシュタイン公国 (注1)
Förschtatum Liachtaschta
Fürstentum Liechtenstein
Principality of Liechtenstein


Map_of_Liechtenstein.gif

統計データは原則として2013年時点のもの。

[地理]
位置:ヨーロッパ
面積:約160km² (小豆島とほぼ同じ)
人口:約3.7万人
首都:ファドゥーツ (Vaduz)
最大都市:シャーン (Schaan)
主要民族:ドイツ系アレマン人86%
       少数のイタリア人、トルコ人など。
主要言語:ドイツ語が公用語で、国民のほとんどが母語として用いるが、
       標準ドイツ語は政府機関や教育など公共性の高い分野で使
       われる程度で、日常的にはアレマン語(アレマン方言)と呼ば
       れる高地ドイツ語の一派が用いられる。アレマン語話者の言
       葉は標準ドイツ語の話者には理解困難で、別言語として扱わ
       れる場合も多い。
主要宗教:キリスト教(カトリックが大半。一部にプロテスタント諸派)84%
       無宗教11%
       イスラム教4%
       極少数のユダヤ教など。

[政治・軍事]
建国:1719年(神聖ローマ帝国領邦としてリヒテンシュタイン公領成立)
独立:1806年7月12日(同帝国の解体により独立)
国連加盟:1990年9月18日
政治体制:立憲君主制、議院内閣制 (君主権限も依然として強い)
元首:公
    リヒテンシュタイン家による世襲制。
    原則として終身制。
政府:内閣
    公が議会最大会派の指導者を首相に任命。
    他の閣僚も公が任命するが、議会の承認が必要。
    また、副首相は最大野党から選任されなければならない。
議会:一院制の国会
    25議席。直接選挙制(比例代表制)。任期4年。
政党制:進歩市民党と祖国連合による二大政党制。
国政選挙権:18歳以上の国民全て
兵役制度:なし (正規軍なし)
軍組織:小規模な警察隊を除き、軍事力を持たない。
     1919年よりスイスに国防権を委任している。

[経済・その他]
中央銀行:リヒテンシュタイン国立銀行
通貨:スイス・フラン (franc, CHF, 注2)
国内総生産(GDP):48億2600万米ドル
1人当たりGDP:13万4617米ドル
GDP構成比:農林水産業5~10%
        鉱工業35~40%
        サービス業55~60% (2012年推計値)
労働人口:リヒテンシュタイン居住者のみならず、スイスやオーストリア
       からの通勤者も多いため、政府は正確な数値の算出は不可
       能と判断し、公式の統計を採っていない。推計値では国内居
       住者と国外通勤者を合わせて3.5万人前後とされる。
失業率:不明 (2%前後と推計される)
輸出額:38億100万米ドル
輸出品:機械類(特に精密機器)、金属製品、自動車部品、化学製品
輸出先:スイスとEU諸国がほとんど (割合不明)
輸入額:20億9000万米ドル
輸入品:金属原料、石油製品、食料品、機械類、自動車、繊維製品
輸入元:スイスとEU諸国がほとんど (割合不明)
貿易備考:スイスと単一の共同市場・経済圏を形成し、経済面では1国と
       して扱われる。そのため対スイス貿易は国外貿易と見なされ
       ず、統計が採られないため、上記の数値から除外されている。
ccTLD:.li
インターネット利用者数:3.2万人 (2012年)
車両通行:右側通行
国別電話番号:423

(注1)
リヒテンシュタイン侯国とも表記される。

(注2)
1919年に締結されたスイスとの関税条約に基づき、翌1920年からスイス・フランがリヒテンシュタインでも通貨として使用されている(1921年には憲法制定により正式に法制化)。その後も共同市場制の導入、国境開放、移動の自由の保障など多くの条約や協定が両国で締結されており、経済面ではリヒテンシュタインはスイスとほぼ一体化している。

1980年に新たに結ばれた条約では、リヒテンシュタイン国立銀行に少量の硬貨鋳造権が認められ、スイス国内のスイス・フランとは異なるリヒテンシュタイン独自のデザインの硬貨が発行されるようになったが、日常的な通貨としては用いられず、もっぱら海外の収集家向けの記念品となっている。


《国歌「若きライン川の上流に」》
制定:1920年(1963年一部改定)
作曲:不明 (イギリス国歌と同じメロディだが、選定者は不明)
作詞:ヤーコブ・ヤウホ

若きライン川の上流に構えしリヒテンシュタイン。
アルプスの高き地に。
この愛しき祖国、敬愛せし神の御手により、
我らのために選ばれし地。

リヒテンシュタインよ、永遠(とわ)に。
若きライン川の上流に花開かせし、
幸福と信頼の国!
この地の公よ、我らが祖国よ、永遠にあらんことを。
兄弟愛の如き深き紐帯の中で、団結せよ、自由たれ!

《国名の由来》
標準ドイツ語で「輝く石」、すなわち「宝石」を意味する。この国の君主位を世襲するリヒテンシュタイン家がそのまま国名となっているが、君主の家名をそのまま国名に取り入れた国は世界でも珍しく、リヒテンシュタインの他にはサウジアラビア(サウード家のアラビア)のみである。なお、リヒテンシュタインという日本語表記は標準ドイツ語の発音に基づくもので、国民の大半が用いるアレマン語(アレマン方言)ではLiachtaschta(リアハタシュタ)と表記される。英語での発音はリテンスタイン。

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プロフィール

嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

国旗に関しては、まずは基礎知識カテゴリを熟読して下さい。

ツイッターやってます。基本的に更新情報はここでつぶやいてます。

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