ヨルダン

ヨルダン
الأردن (アラビア語)
Jordan (英語)

Flag_of_Jordan.png

ヨルダンはアラビア半島の西の付け根に位置する中東の王国です。この地には紀元前8世紀頃には既に人の定住が見られ、南アラビア、メソポタミア、エジプト、アナトリア、そして地中海世界を結ぶ交通・商業の要衝として栄えた歴史を持ちます。中でも紀元前4世紀から紀元後1世紀頃まで繁栄を極めたナバテア王国の首都ペトラは、当時の都市としては異例な20万人という膨大な人口を記録し、現在でもその都市遺跡は世界遺産として、ヨルダン観光の名所となっています。しかしその後はより交易に適した立地を求める諸民族の移動があり、この地は次第にオアシスを転々と移動する遊牧民が点在するだけの寂れた地域となっていき、後にオスマン帝国がこの地を領有した後も、目立つ物の無い辺境の砂漠地帯とみなされ、特に顧みられることはありませんでした。

19世紀に入ると、圧政が続いていた帝政ロシアからの逃亡民族(主にチェルケス人)の移住地として、再び人口の集中が見られるようになり、第一次大戦後のオスマン帝国による領有放棄、パレスチナ地方のイギリス領有が決まると、この地もその一部として統治されることとなりました。その際、イスラム教の預言者ムハンマドの親類に当たるアラブ随一の名門、ハーシム家を迎えて形式的に王座を任せ、自治国トランスヨルダンが成立。アラブ世界での名声を武器にイギリスは間接統治を敷くこととなりました。第二次大戦後の1946年には正式な独立を達成し、1949年に国名を現在のヨルダン・ハーシム王国と改称。以後も引き続きハーシム家の国王が強大な権力を有しながら、国王の任命による首相、国王と首相の協議によって任命される内閣、そして国民が選出する議会の諮問を受けて国家を運営する特殊な立憲君主制が形作られています。経済的には、他の多くのアラブ諸国のように膨大な石油資源を抱えているわけではなく、決して豊かとは言えませんが、代わって近現代の農業に欠かせないリン鉱石が豊富に採れることから、鉱石そのものや肥料に加工したリン酸製品が主要な輸出物となっています。ちなみに隣の旧イラク王国も同じような経緯でイギリスが樹立した国の1つであり、王位にも同じくハーシム家の人物が就いていましたが、こちらはあまりにも王家が親英政策を強硬したため国民や軍部の反感を買い、1958年にクーデターで打倒されてしまいました。

ヨルダンの国旗は、ハーシム家を王家としてから5年後の1928年に制定されたもので、イスラム圏が誇る歴代王朝を想起した、典型的な汎アラブ色を使った国旗となっています。赤はアラブ人の血と預言者ムハンマドを、黒は勝利とアッバース朝を、白は純潔とウマイヤ朝を、緑は国土とファーティマ朝をそれぞれ表します。またハーシム家の象徴たる赤い三角形の中にある七稜星は、イスラム教の聖典『クルアーン(コーラン)』第1章7行、つまり信仰告白(シャハーダ、注1)を象徴すると同時に、全アラブ人の統一性を示しています。この国旗、ヨルダンより一足先に成立した王国時代のイラク国旗とよく似た意匠であり、ヨルダン王室がハーシム家同士の紐帯を重視していたことがうかがえます。実際、両国は1958年にアラブ連邦という国家連合を形成したことがありますが、同年中にイラクでクーデターが発生し、王政が倒れてしまったため、両国の統合が白紙に戻った歴史的経緯があります。

縦横比:1対2


ヨルダン・ハーシム王国 (注2)
المملكة الأردنية الهاشمية
Hashemite Kingdom of Jordan


Map_of_Jordan.gif

統計データは原則として2013年時点のもの。

[地理]
位置:アジア
面積:約8.9万km² (北海道より少し大きい)
人口:727万人
首都・最大都市:アンマン (Amman)
主要民族:アラブ人98%
       カフカス系(チェルケス人が大半)1%
       アルメニア人1%
主要言語:アラビア語が公用語で、国民の大半が母語として使用する。
       英語は公的な地位こそ与えられていないものの、教育界と商
       業界を中心に広く用いられる言語となっており、ある程度の教
       育を受けられる中流・上流階級を軸に、国民の4割以上が理解
       できる。ただし都市部から離れるほど理解率は低下する。
主要宗教:イスラム教(スンナ派がほとんど)92%
       キリスト教(正教会とカトリックが大半)6%
       少数のドゥルーズ派(注3)、バハーイー教など。

[政治・軍事]
独立:1921年4月11日(自治国)、1946年5月25日(完全独立)
国連加盟:1955年12月14日
政治体制:立憲君主制、国王に実権
元首:国王
    ハーシム家による世襲制。
    原則として終身制だが、議会に退位決議権がある。
政府:内閣
    首相は国王が任命。
    他の閣僚は国王との協議に基づき、首相が任命。
議会:二院制の国民議会
    ●元老院(上院)
     75議席。国王による任命制。任期4年。
    ●代議院(下院)
     150議席。直接選挙制で、123議席は大選挙区から、27議席は
     比例代表制に基づき選出。うち15議席は女性議員枠。任期4年。
政党制:多党制だが、政党の活動は低調
     (議員のほとんどは無所属)
国政選挙権:18歳以上の国民全て
兵役制度:志願制
国防費:14億4800万米ドル (2012年)
軍組織:ヨルダン軍
     陸軍8万8000人
     海軍500人
     空軍1万2000人

[経済・その他]
中央銀行:ヨルダン中央銀行
通貨:ヨルダン・ディナール (dinar, JOD)
国内総生産(GDP):338億5800万米ドル
1人当たりGDP:5174米ドル
GDP構成比:農林水産業3.2%
        鉱工業29.9%
        サービス業69.9%
労働人口:190万人
失業率:14.0%
輸出額:79億1400万米ドル
輸出品:繊維製品(衣類が大半)、リン鉱石とリン酸肥料、野菜と果物、金
輸出先:米国15%、イラク14%、インド11%、サウジアラビア10%、レバノン4%
輸入額:186億1000万米ドル
輸入品:原油と石油製品、自動車、鉄鋼、機械類、医薬品、食料品
輸入元:サウジアラビア22%、中国9%、米国6%、ドイツ5%、イタリア4%
ccTLD:.jo
インターネット利用者数:267万人 (2012年)
車両通行:右側通行
国別電話番号:962

(注1)
信仰告白(シャハーダ)とは「アッラーの他に神は無く、ムハンマドはアッラーの使徒である」と個人が宣言すること。すなわち、イスラムの唯一神たるアッラーだけを神として認め、他のいかなる神も廃することに賛同する、と明言する行為のこと。この言葉を他のイスラム教徒や権威あるイスラム指導者が認める場で発した瞬間から、その人物はイスラム教徒として受け入れられ、イスラム共同体の構成員になるという(ただしシャハーダの口述はアラビア語で発した場合に限られる)。

(注2)
日本外務省は公式国名をヨルダン・ハシェミット王国、慣例ではヨルダン・ハシミテ王国と表記する。いずれもハーシムの形容詞系をそのままカナ表記したもの。

(注3)
ドゥルーズ派は、シーア派系のイスマイル派から11世紀頃に分かれたイスラム教の一派だが、『クルアーン(コーラン)』とは異なる独自の聖典を持つこと、メッカを聖地と見なさず巡礼もしないこと、断食が義務化されておらずほとんど行う者がいないなど、一般的なイスラム教の教義からの逸脱が目立つため、大多数のイスラム教徒からは異端視され、イスラム共同体(ウンマ)の一員とは認められていない。そのため統計上もイスラム教徒には含まれず、独自のカテゴリが設けられている。


《国歌「ヨルダン王の歌」》
制定:1946年
作曲:アブドルカーデル・アル=タネール
作詞:アブドルモネーム・アル=リファイ

国王の永からんことを。
国王の永からんことを。
その地位、極限の高みにありて、
至上の誇りと共に、その旗のなびかんことを。

《国名の由来》
アラビア語ではالأردن(アル=ウルドゥン)、英語ではJordan(ジョーダン)と表記される。日本語でもかつては英語由来のジョルダンと書かれていたこともあったが、現在はヨルダンで統一されている。

公式国名は「ハーシム家の王国ヨルダン」を意味する。イスラエルやパレスチナとの国境になっているヨルダン川に由来するが、この川はシリアやレバノンの高原・山地を水源とし、標高の低い南部の死海へと流れ込んでいく。その様子を古代ユダヤ人が「(低い土地へ)下降する川」を意味するנהר הירדן(ネハル・ハ・ヤルデン)と呼び、このヤルデンがアラビア語でウルドゥンとなり、やがて転訛しながら各地に広まった。

イギリス統治下からしばらくはトランスヨルダン(Transjordan)と呼ばれていたが、トランスとは「○○の向こう側」を意味する。当時のヨルダンはイギリス委任統治領パレスチナの一部であり、その政庁が置かれていたエルサレムから見てこの国がヨルダン川の向こう側にあったことに由来する。しかし独立後、イギリス人中心のこの見方に対して懐疑的な意見が広まったことから、1949年にトランスを外した国名を採用した。

旧国名
1921-
1946
 トランスヨルダン首長国
(ア)إمارة شرق الأردن
(英)Emirate of Transjordan
1946-
1949
 トランスヨルダン・ハーシム王国
(ア)المملكة الهاشمية شرق الأردن
(英)Hashemite Kingdom of Transjordan

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プロフィール

嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

国旗に関しては、まずは基礎知識カテゴリを熟読して下さい。

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