キプロス

キプロス
Κύπρος (キプロス) (ギリシャ語)
Kıbrıs (クブルス) (トルコ語)
Cyprus (サイプラス) (英語)

Greek_Cyprus.png

ヨーロッパとアフリカ、そしてアジアの間に横たわる地中海の東部に浮かぶキプロス島は、シチリア島、サルデーニャ島(共にイタリア領)に次いで、同海域で3番目に大きな島です。歴史的には長らくギリシャ人の最東端の版図と見なされ、その位置により古くから地中海貿易の中継地として栄えました。それ故にギリシャ人以外にも多くの民族・国家がこの島の領有を目指し、ペルシアやローマ、ビザンツ、ヴェネツィア、オスマン帝国と支配国は時代と共に入れ替わってきましたが、19世紀に入ると、イギリスが東地中海における重要な戦略拠点となりうるこの島に狙いを定めました。折しも1877年に始まったロシアとの戦争(露土戦争)で、当時の島を支配していたオスマン帝国は疲弊しており、イギリスはロシアからの攻撃があった場合にオスマン帝国を支援する代わり、キプロス島の統治権を委譲する協約を提案します。藁にもすがる思いのオスマン帝国はこれを受諾し、1878年に島はイギリスの施政下に置かれました。当初はまだ名目的にはオスマン帝国の領土であり、イギリスは統治のみを委ねられた状態(いわゆる租借地)でしたが、第一次大戦で両国が敵国同士になると協約は破棄され、イギリスはオスマン帝国の官吏を島から追放。1914年には併合を宣言し、戦後の1925年には正式に植民地化が完了しました。

イギリスはあくまで軍事利用のためにキプロス島を獲得したため、島の経済開発には無関心で、農地を含む多くの土地が軍用地として接収されました。これには先住のギリシャ系、オスマン帝国時代に流入したトルコ系の双方が猛反発し、反英闘争が繰り広げられましたが、イギリスはこれを徹底的に弾圧。閉塞感に包まれたギリシャ系は公然とギリシャへの併合を求めるようになり、これはやがてギリシャ語で「統合」を意味するエノシスという運動に発展しました。一方のトルコ系もトルコへの併合を主張し、島の二大民族がそれぞれ異なるベクトルで反英闘争を繰り広げながら、次第に民族対立も激化。結局、イギリスもこうした動きを抑えきれず、住民が求めるギリシャやトルコへの併合ではなく単独で独立すること、独立後も島の一部に英軍基地を維持することを条件に弾圧を停止。当時の島の人口比に合わせて権力を分け合う形でひとまず両住民も合意し、1960年にキプロス共和国として独立を達成しました。しかし住民の間には依然、根強い対立感情があり、1963年の大規模な暴動を皮切りに、断続的に島の各地で両民族の争いが発生。この隙を突く形で、ギリシャがエノシス過激派を支援して1974年にクーデターを起こさせると、同胞の安全を守るためとしてトルコも公然と武力介入。島の北部を占領し、トルコ系をかくまう一方で、ギリシャ系を南部に追放しました。結局クーデターは失敗に終わり、キプロス共和国は現在も存続していますが、その統治はトルコ軍が占領した北部には及んでおらず、1983年には北キプロス・トルコ共和国の樹立が宣言されて分断が固定化。国連などの仲介で何度も再統合案が話し合われていますが、双方の意見の隔たりや経済格差が大きく、実現には至っていません。

キプロスの国旗は1960年の独立と同時に、トルコ系キプロス人の画家であり教師でもあったイスメト・ギュネイの発案に基づき制定されました。上記のような歴史を持つ事情を鑑み、地色にはギリシャの青でもトルコの赤でもなく、何物にも染まらない純潔の象徴として白が採用されています。旗の中央部にはキプロス島の形が配されていますが、国の形をそのまま国旗に取り入れているのは大変珍しい例で、キプロスのほかには未承認国家のコソボしかありません(ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗も国の形をモチーフとしていますが、図案化されています)。キプロス島が黄銅色で塗られているのは、ローマ時代のこの島が銅の一大産地として知られていたことに由来し、後に銅(ラテン語でcuprum、英語でcopper)の語源にもなりました。島の下に置かれた2つのオリーブの枝は、ギリシャ系とトルコ系の融和と友好を表します。しかしこの旗が実際に掲げられるのは政府の公的組織や国際機関、そしてオリンピックなどのスポーツイベントぐらいで、民間ではギリシャ国旗が掲げられるケースが大半とのこと。ちなみに北部はトルコ国旗と独自の北キプロス国旗を併用しています。

縦横比:3対5


キプロス共和国
Κυπριακή Δημοκρατία (キプリアキ・デモクラティーア)
Kıbrıs Cumhuriyeti (クブルス・ジュムフリイェティ)
Republic of Cyprus (リパブリック・オブ・サイプラス)

Map_of_Cyprus_.png

統計データは原則として2015年時点のもの。分離独立状態にある北キプロスは、原則として統計からは除いている(すなわち以下のデータは、「キプロス共和国」政府が統治している南側のみを示す)。

[地理]
位置:アジア (ヨーロッパに分類されることもある)
面積:5896km² (三重県とほぼ同規模)
人口:約84万人
都市人口率:66.9%
首都・最大都市:ニコシア (希:Λευκωσία 土:Lefkoşa 英:Nicosia)
          ニコシア市北部は北キプロスの統治下にあり、同国の首
          都とされているため、キプロス共和国の統治地域は実質
          的に市街南部に限定されている。
主要民族:ギリシャ系83%(キプロス国籍79%、ギリシャ国籍4%)
       イギリス人3%
       ロシア人3%
       少数の東南アジア系、東欧系、南アジア系など。
主要言語:憲法上はギリシャ語とトルコ語が公用語だが、南側で
       用いられるのはほぼギリシャ語のみ。外国語では英語
       が広く通じ、南側の住民の7割はギリシャ語と英語のバ
       イリンガルである。
主要宗教:キリスト教95%
        正教会89%
        ローマ・カトリック教会3%
        プロテスタント諸派(聖公会が主)2%
        少数のマロン派、アルメニア使徒教会など
       イスラム教2%
       無宗教1%

[政治・軍事]
独立:1960年8月16日
国連加盟:1960年9月20日
政治体制:共和制、大統領制
元首:大統領
    直接選挙制、任期5年、3選禁止。
政府:閣僚評議会(内閣に相当、首相職なし)
    閣僚は大統領が任命。
議会:一院制の代議院(単に国会とも)
    憲法上は80議席。直接選挙制(比例代表制)。任期5年。
    ギリシャ系に56議席、トルコ系に24議席が与えられるが、
    トルコ系議席は1964年以来空席となっている。代わりに
    少数派であるマロン派キリスト教徒用の議席として3議席
    が新設され、計59議席で運営されている。
政党制:多党制
国政選挙権:18歳以上の国民全て
兵役制度:徴兵制
国防費:4億2700万米ドル
軍組織:キプロス国家守備隊
     総数1.2万人。他国のように陸・海・空軍などに組織を分け
     ていないが、過半数は陸上戦力である。

[経済・通信・その他]
(以下の数値は全て北キプロスを除いたもの)
中央銀行:キプロス中央銀行 (注1)
通貨:ユーロ (euro, EUR, 注1)
国内総生産(GDP):193億2000万米ドル
1人当たりGDP:2万2957米ドル
GDP構成比:農林水産業2.2%
        鉱工業10.3%
        サービス業87.5%
労働人口:35万人
失業率:15.5%
輸出額:27億5900万米ドル
輸出品:再輸出品、蒸留酒、乳製品、ジャガイモ、飲料
輸出先:ギリシャ11%、アイルランド10%、英国7%、イスラエル6%、ポーランド5%
輸入額:62億8600万米ドル
輸入品:精製石油、船舶、自動車、機械類、医薬品、穀物、肉類、鉄鋼
輸入元:ギリシャ26%、英国9%、イタリア8%、ドイツ8%、イスラエル6%
固定電話回線数:32万4000回線
携帯電話回線数:111万1000回線
国別電話番号:357
ccTLD:.cy
インターネット利用者数:約79万人
車両通行:左側通行
平均寿命:78.7歳 (男性75.8歳、女性81.6歳)

[日本との関係]
国交樹立:1962年6月
相手公館:無し (駐中国大使館が兼轄)
駐日相手国人数:54人 (永住者10人)
相手輸出額:116万米ドル
相手輸出品:再輸出品、アルミくず、飲料、乳製品
日本公館:無し (駐ギリシャ大使館が兼轄)
在留日本人数:45人 (永住者17人)
日本輸出額:1億9700万米ドル
日本輸出品:船舶、自動車、機械類、化学薬品
現行条約:1972年 査証(ビザ)相互免除取極

(注1)
ヨーロッパ連合(EU)が統一通貨としてユーロを導入して以降、通貨発行権や金融政策の方針決定権はヨーロッパ中央銀行が担うようになり、ユーロ導入国が本来設置していた中央銀行はその傘下にある執行組織に改組された。ユーロ導入国の各中央銀行総裁はヨーロッパ中央銀行政策理事会の一員となり、連携してヨーロッパ中央銀行の政策を決定し、それに基づいて各国内での業務執行に当たることとされる。

なお、ユーロ導入前にキプロス中央銀行が発行していた通貨はキプロス・ポンド(pound, CYP)である。


《国歌「自由への賛歌」》
制定:1966年
作曲:ニコラオス・マンザロス
作詞:ディオニシオス・ソロモス
備考:ギリシャと同じ国歌

我は畏敬の剣にそなたの姿を見る。
そなたは勇敢なる魂を持って、
大地を見渡し、統べる。

古(いにしえ)のギリシャ人よ、
その死は、生命と精神の自由をもたらした。
今、古き武勇を呼び起こせ。
歓喜と共に迎え入れん。おお、自由!

《国名の由来》
ギリシャ語ではΚύπρος(キプロス)、トルコ語ではKıbrıs(クブルス)、英語ではCyprus(サイプラス)と表記される。かつては日本外務省も英語の発音に倣ってサイプラスと表記していた。未承認国家の北キプロス・トルコ共和国との対比から、南キプロスギリシャ系キプロスと呼ばれる場合もある。

国名は古代ギリシャ語に由来するが、その意味には「イトスギ」を表すΚυπάρισσος(キュパリッソス)、「銅」を表すΧαλκός(カルコス)の2つの説がある。いずれもかつてはキプロス島が主要な産地と見なされていた資源である。「銅」を表す単語はキプロスからきていると前述したが、後者の説を採るならば、その語源は更に古代ギリシャ語にまでさかのぼれることとなる。ちなみに現在は、島の銅はほぼ枯渇している。

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プロフィール

嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

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