(準州) ヌナヴット

ヌナヴット
Nunavut (英語、フランス語)
ᓄᓇᕗᑦ (イヌクティトゥット語)

Flag_of_Nunavut.png

カナダ北東部に位置するヌナヴット準州は、1999年に西隣のノースウエスト準州から分離して誕生した、国内で最も新しい準州です。ハドソン湾に面するカナダ本土の北部地域のほか、世界で5番目に大きな島であるバフィン島や、同10位のエルズミーア島といった巨大な島々を含む北極諸島の大半を管轄下に置いており、その面積はカナダを構成する13の州・準州の中で最大です(日本の5.5倍に相当)。ただ領域の多くが北極圏内にあり、寒い国として知られるカナダの中でもとりわけ厳しい気候と凍てついた不毛の大地を抱えるため、人間の居住に適した土地はごく一部に限られ、人口は3万人余りと非常に希薄です。また「ファースト・ネイションズ」と呼ばれる諸部族(詳細はユーコン準州を参照のこと)が主体となっている他の2つの準州と異なり、住民の大半がイヌイット系で占められているため、海峡を挟んで隣接するグリーンランドとの文化的結びつきが強く、多文化主義に慣れ親しんだ他のカナダ人から見ても異色な伝統や風習が、色濃く残っている地域でもあります。

ヌナヴットの地にはおよそ4000年前から、現在のイヌイット系住民の祖先に当たる人々が定住を始めたとされ、古くは北欧を拠点としていたヴァイキングがアイスランド、グリーンランドを経て10世紀頃にバフィン島に到達し、先住民と交流を持ったと思われる文献が残されています。しかしヨーロッパ人が本格的にこの地に進出しだしたのはそれから数百年後、大航海時代初期に当たる16世紀のことで、毛皮の交易や探検を通じて少しずつ勢力を拡大していき、1870年にはノースウエスト準州の一部としてカナダ政府の統治下に入りました。ただ、準州内で白人に次ぐ最大の先住民集団を形成する「ファースト・ネイションズ」に比べると、イヌイットの数は相対的に少なく、発言権が抑えられたうえ、カナダ政府自身も準州の中核地域から隔絶されたこの地にはあまり関心を示さなかったため、イヌイット住民が多数を占める地域を新たな行政区画として分離する運動が1970年代半ばから発生。イヌイットの各団体は連邦政府並びにノースウエスト準州政府と交渉を重ね、1982年には住民投票で分割支持派が約56%の過半数を占めました。この投票に伴い、準州の分割作業が少しずつ進められ、1993年にイヌイット団体と連邦政府が「ヌナヴット土地請求権協定」を締結し、分割後の準州間の境界を策定。そして1999年には連邦政府が新区画設立に必要な事項を定めた「ヌナヴット法」を制定し、国内法上の手続きが完了。晴れてカナダを構成する13番目の行政区画(準州としては3つ目)として、ヌナヴット準州が誕生したのです。以後、ヌナヴット準州政府はイヌイット系住民の伝統と生活様式を保護しつつ、地下に眠る莫大な天然資源や観光業をテコに経済開発が進められるようになり、準州民の平均所得はカナダ平均を上回る水準を記録するまでになっています。

ヌナヴットに住むイヌイットのシンボルとして独自の旗を掲げようという動きは、旗章学界の主導で1950年代初めから本格化しました。その中でも特に積極的に行動を起こしたのは、カナダ総督の管轄下で国旗や州旗、各種紋章の認証・管理を担うカナダ紋章局で、実際に研究者を含む局員がフロビッシャー・ベイ(現在の準州都イカルイットの、1987年までの旧称)など各地のイヌイットの街を渡り歩きながら、彼らの生活様式や風習を記録していきました。その後、紋章局がカナダ全土から旗のデザインを公募し、800以上寄せられた数々の作品の中から、先に実施された研究結果を踏まえつつ、ヌナヴットの象徴にふさわしい旗を選定。そして1999年、ヌナヴット準州発足と同時に、現地のイヌイットでありグラフィックデザイナーとして働くアンドリュー・カッピクが作成した図案が、ヌナヴットの新たな準州旗として公式に制定されることとなりました。旗のデザインは黄が資源豊かな大地を、白が土地を埋め尽くす雪と氷河を、フライ側に置かれた青い星は美しい空と、イヌイットの長老の指導権、そして古くから彼らが集落の外や海洋に出る際に星を目印に移動していた歴史を表します。中央の意匠は、イヌイットが伝統的に道しるべや聖域の目印として建造してきたイヌクシュクと呼ばれる石碑で、それを赤く塗ることで、この土地がカナダの一部であることを象徴します(カナダ国旗にも使われている通り、一般にカナダのナショナルカラーは赤と考えられている)。

縦横比:9対16


ヌナヴット準州
Nunavut Territory
Territoire du Nunavut
ᓄᓇᕗᑦ


Location_of_Nunavut_Territory_.png

統計データは原則として2012年時点のもの。

[地理]
面積:203.9万km² (カナダ全土の約20.42%)
人口:約3.2万人
準州都・最大都市:イカルイット (Iqaluit, バフィン島南西部)
主要民族:イヌイット84%
       ヨーロッパ系白人13%
       他に少数のファースト・ネイションズ、アジア系移民など。
主要言語:英語、フランス語、イヌクティトゥット語の3公用語。
主要宗教:キリスト教90%(プロテスタント諸派67%、カトリック23%)
       無宗教6%

[政治]
準州成立:1999年4月1日
元首代理:弁務官
       カナダ政府(連邦政府)が任命。任期は無いが、
       在任期間は5年とする慣習が成立している。
政府:準州政府
    準州首相と閣僚は議会が選出し、弁務官が任命。
議会:一院制の立法議会
    直接選挙制。任期は無いが、おおむね4年から5年に
    一度、総選挙を実施する慣習が成立している。
政党制:無党制 (注1)

(注1)
政党の結成そのものは禁止されていないが、準州成立以来の伝統として政党制に拠らない政治運営が定着しており、議会選後に近しい主義の議員が集まって緩やかな会派を形成するに留まる。


《準州名の由来》
イヌクティトゥット語で「我らの土地」を意味する。ここでいう我らとはイヌイットのことであり、古くからカナダ北方のイヌイット居住地域を漠然と指す名称として使われてきたが、異民族支配からようやく自治を勝ち取った経験から、新たな準州が成立した際に、地名として公式に採用された。日本語ではヌナヴト、ヌナブト、ヌナブットと言った表記ゆれも見られる。

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嫁ドリル

Author:嫁ドリル
国旗と酒をこよなく愛する関西女。
カイロ、ドバイ、カルガリー駐在員を経て、現在は関東で働きながら旦那と1女1男の4人暮らし中。

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